金銭の取決めがあれば必ず離婚公正証書に!

ご自身の離婚の場合には離婚協議書にするべきなのか、離婚公正証書にしておくべきなのかということで迷うことがあると思います。

実際に限定的ではありますが、離婚協議書として作成しておくだけで良い場合もありますが、基本的には離婚公正証書にしておいた方が無難でしょう。

基本的には養育費などの金銭に関する取り決めがある場合は離婚公正証書にしておかなければなりません。

離婚公正証書は、その作成に公証人手数料を要し、離婚協議書に比べると公証人との打ち合わせ等でどうしても時間がかかります。

そういった理由から離婚公正証書にすることを避けようとする方も少なくないのですが、公正証書は証明力も高く、その効力も非常に強いので後のトラブルを回避するためなら公正証書の方が断然に良いのです。

以前の記事で離婚協議書と離婚公正証書の違いについて解説しましたが、今回は離婚公正証書がどのようなものなのか解説していきます。

離婚公正証書の証拠力。

金銭に関する契約の証拠というものは、契約書や領収書が重要な証拠になります。

ただの契約書である離婚協議書は偽造や改ざんをされる恐れがあり、証拠としての価値が低く、その作成の真意から争われることがあります。

離婚協議書という契約書がある以上、裁判では勝てる可能性は高いのですが、無駄に時間がかかりその時間や費用はばかになりません。

それが公証人が作成する公文書である離婚公正証書なら、その内容が夫婦間で離婚前に契約していたものと判断されるようになるというように非常に証拠力が高いのです。

また、離婚協議書は紛失の恐れもあり、紛失してしまえばなんの証拠も残らず、金銭の支払いが滞ったときはどのような契約をしていたのか何も証明するものがありません。

その点、公正証書は、ご自身が持っているものを紛失したりしても、公証役場には、20年間その公正証書の原本が保管されており、もし紛失したとしても再発行が可能なのです。

なので、特に養育費は一般的に長期的に支払われるものなので、必ず離婚公正証書を作成しておかなければなりません。

また、財産分与や慰謝料等を分割して支払われる場合も同様です。

まさか離婚協議書のような重要な書類を無くすわけがないと思っている方もいらっしゃるかもしれませんが

「離婚協議書を無くしてしまった!どうしたらいい?」

「汚れてしまって字が見えなくなってしまった!」

というご相談も意外と多いのが現実なのです。

債務者の給料や財産を差押え、強制執行。

離婚公正証書の最大の効力と言っても過言ではないのが、この強制執行です。

公正証書に記載された内容は、裁判での判決と同様の効果があり、養育費やその他の金銭の不払いが発生したときには、裁判をする必要がなく、判決を待たずして強制執行をすることができます。

もしこれがただの契約書である離婚協議書では養育費の不払いが発生した場合、すぐに強制執行ができないため、裁判を一から始めることになります。

この裁判にかかる期間というのは非常に長く、養育費の不払いの発生してから裁判を提訴し、裁判で勝訴判決を得てから差押ができ、その後に強制執行が可能になるので、一年もかかることは稀でしょうが、この期間を耐えられるどうかという問題になります。

離婚協議書を紛失や汚損することなく、残っていれば証拠になるので裁判に勝てる可能性は高いでしょう。

しかし、裁判にかかる膨大な時間と費用を考えると裁判期間中に支払われるはずだだった養育費や、分割で支払われる慰謝料や財産分与を受け取ることができたとしても、元は取れません。

離婚公正証書を作成していなかった場合、こういった不払いが発生してしまうと、裁判をするか泣き寝入りをするかのどちらかになるでしょう。

このサイトでは金銭の支払いは滞るということが、さも当然のように記事を書いていますが、金銭の支払いはまず間違いなく滞ります。

それは離婚公正証書を作成していても同様です。

支払が滞ることはまず間違いなく起こることなので、後の手続きに便利な離婚公正証書を作成しておかなければならないのです。

特にその支払いが長期的なものは確実にどこかで支払いが遅れたり止まってしまうと思っておいて間違いはありません。

金銭に関する取り決めがなければ、離婚協議書すら必要ない?

金銭に関する取り決めがなければ離婚協議書すら必要がないと思われている方が多数いらっしゃいます。

その答えとしては、金銭に関する取り決めがなくても離婚協議書は必要です。

離婚協議書には、金銭以外の取決めでも、事実の確認として親権者をどちらにするのかということや、離婚に合意したこと、婚姻費用が支払われていたこと等を記載します。

そして清算条項というもので、その夫婦の離婚に関する問題は全て解決し、後にお互いに何も請求しないという文章を記載するようにします。

この清算条項を記載しておくことにより、後に何らかの理由をつけての慰謝料等の金銭の請求を防ぐことができます。

一見、支払い義務者になることの多い男性に有利な条項のようにも思いますが、何らかの理由をつけては慰謝料を請求しようとする人は多いのが現実なので、女性でも離婚後に何も請求するつもりがないのなら、しっかりと離婚協議書を作成しておきましょう。

金銭の支払いがなく事実を確認するだけであれば、離婚公正証書を作成する必要性は低いでしょう。

また、離婚協議書に記載された内容を覆そうと思うと、どちらにしても調停や裁判の手続きが必要になってきます。

証明力・証拠能力という点では、離婚協議書は離婚公正証書に劣りますが、しっかりと離婚協議書が作成されていれば問題は少ないでしょう。

しかし、これは離婚協議書を不備なく作成できているということが前提なのでご自身で作成した場合は、必ず離婚前に専門家にチェックだけはしてもらいましょう。

公正証書の作成をまだ悩んでいる方へ。

金銭に関する取り決めがある場合は、離婚公正証書は時間がかかったり、費用がかかるからという理由だけで離婚公正証書にしないということは絶対にしないでください。

また、相手が離婚公正証書の作成に非協力的で、離婚公正証書の作成を絶対に諦めてはいけません

しかし、離婚時に相手が公正証書の作成をかたくなに拒否する、金銭的な問題、離婚を急ぐ必要がある等、何らかの理由で離婚公正証書の作成を断念せざるを得ない場合があります。

相手がどうしても公正証書の作成に同意しない場合は躊躇せずに必ず裁判所手続きの離婚調停を利用するようにし、調停調書を作成するようにしましょう。

調停調書についてはまた後日の記事で。

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