離婚協議書作成・第2条(養育費)
第2条(養育費)についての解説です。
養育費は子供が成人するまで継続的に支払われるということが非常に少ないものです。
それどころか、離婚当初から支払われていないというケースも多く、その支払いの確保が非常に難しいものとなります。
この支払いの確保が難しい養育費をしっかりしはらわせるためには、ハッキリ言って離婚協議書では足りません。
養育費の支払を確保するためには公正証書や調停調書等の強制力のある公的な書面でしっかりと取り決めをしておく必要があります。
離婚協議書と公正証書では記載のしかたは同様なので、まずはどのように記載をするのかをしっかりと見ておきましょう。
養育費の離婚協議書への記載の仕方
離婚協議書に記載するときは以下のような文章になります。
第2条(養育費)
甲は乙に対し、丙及び丁、戊の養育費として離婚成立日の属する月から、丙及び丁、戊がそれぞれ満20歳に達する日の属する月(丙及び丁が大学・専門学校等 に進学している場合は、その卒業の日の属する月)までの期間、丙に対し各月金00万円也を、丁に対し各月金00万円也を、戊に対し各月金00万円也を毎月 末日限り、乙の指定する金融機関の口座に振込み送金の方法により支払う。但し、当該金融機関が休日の場合は翌営業日とし、その支払に関する費用は、甲が負 担するものとする。
2、甲は、丙及び丁、戊の進学・事故・傷病等、特段の事由により発生する費用が過大になり、通常の養育費の額を大幅に上回る場合、乙の申し出により、甲乙協議の上、別途その必要費用の全部又は一部を負担する。
記載のポイント
- 支払いの始期と終期を明確に記載する。
- 毎月の支払期日を明確に記載する。
- 養育費の総額ではなく、子一人一人に対しての額を記載する。
- 必要に応じて、特別の費用を要する場合の取決め方を記載する。
養育費の支払い期間
支払の始期と終期を明確に定めておかなければなりせん。
上記の例の場合は支払いの始期が、「離婚成立日の属する月」となっており、一見曖昧にも見えますが、これは戸籍で確認できるので問題ありません。
養育費は一般的には子が成人に達するまでというものになりますが、その他、「大学卒業まで」「18歳まで(高等学校卒業)」までとすることもできます。
しかし、たとえ離婚協議書で子が18歳に達したとき(高等学校卒業)に養育費の支払いを終了すると取り決められていても、その子が養育を必要とするのなら後に20歳に達するまで養育費を請求することは可能です。
子が養育を必要としている限り養育費を支払ってもらうことができるのです。
特別の費用
特別の費用とは以下の部分の事です。
子の大学進学に要する費用や、不幸にも事故に遭い療養費があまりにも大きくなってしまった場合に備え、このような文章を記載しておきます。
この例では協議によって負担する費用を決めるという文章を入れていますが、特別の費用が必要になったときにはどのようにその額を取り決めるのかということを決めておくことも必要です。
こういった養育費を大きく上回る金銭が必要になったときは、この記載が無くても請求することはできますが、確認の意味でも記載しておいた方が良いでしょう。
支払に関する費用
支払に関する費用とは銀行振り込みの場合は振込手数料、郵便書留の場合は郵送料等の事です。
金銭の受け払いが発生する養育費や慰謝料の分割払い等は、どれでもそうですが、これぐらいのことで揉めることを考えると最初からしっかりと決めておいた方が良いです。
決めておかないと振込手数料を差し引いて振り込んでくる人もいるようですからね・・・
養育費の額のを記載するときのテクニック
養育費の額は子全員に対する合計額ではなく、個々に養育費を定めていきます。
そうしておかないと一番年長の子が成人を迎えたり、大学を卒業してしまったら養育費の額を算定し直さなければなりません。
僕が離婚協議書を作成する場合は、先に成人を迎える子の養育費の額を少なくし、最後に成人を迎える子の額を大きくします。
そうすることによって、離婚後に再度元夫婦がなるべく顔を合わさずともよくなるようにしています。
例としては以下のような記載の仕方になります。
甲は乙に対し、丙及び丁、戊の養育費として離婚成立日の属する月から、丙及び丁、戊がそれぞれ満20歳に達する日の属する月(丙及び丁が大学・専門学校等 に進学している場合は、その卒業の日の属する月)までの期間、丙に対し各月金1万円也を、丁に対し各月金1万円也を、戊に対し各月金5万円也を毎月 末日限り、乙の指定する金融機関の口座に振込み送金の方法により支払う。但し、当該金融機関が休日の場合は翌営業日とし、その支払に関する費用は、甲が負 担するものとする。
こうしておくと、年長の子が成人を迎えたり大学を卒業したら自動的に養育費が減っていき、最後には年少の子の分だけ妥当な額を支払えばよいことになります。
可能性は低いでしょうが、養育費の額を一番高く設定していた子が、万が一、亡くなってしまうようなことがあった場合は再度協議をする必要はあります。
この記事のまとめ
今回は、離婚協議書への養育費の記載のしかたを見てきました。
養育費は、一般的に長期間の支払われるものです。
それだけに支払いの確保が難しく、離婚協議書や公正証書で取決めをしていても踏み倒しということは起こり得ます。
養育費の支払いを確保するために、協議離婚の場合は、最低限、強制力のある公正証書にしておくべきです。
強制力のある公正証書なら、踏み倒されたとしても、離婚協議書よりは対処のしようがあります。
未成年のお子様がいる場合は、必ず公正証書にしておきましょう。