離婚協議書作成・第6条(年金分割の定め)
第6条(年金分割の定め)の解説です。
年金分割制度とは、被扶養配偶者が老齢期に年金の額が低額になってしまうのを防ぐために設けられた制度です。
一般に専業主婦や、職業についていても収入が低い女性は離婚してしまうと、将来受給できる年金が低額になってしまう恐れがあります。
そこで夫(収入の多い方)の年金を分割し、夫と妻の年金の格差を埋め、老後の生活不安を軽減するようにした制度です。
年金分割の対象は?
年金分割の制度は厚生年金と共済年金の加入者を対象としたもので、分割される側が国民年金の加入者で、婚姻期間中に一度も厚生年金または共済年金の加入者でなかった場合は対象となりません。
この年金分割制度は簡単に言ってしまうと、将来年金がもらえるようになったときに、婚姻期間中に厚生年金又は共済年金に加入していた期間があれば、掛けていた額に応じて収入の多い方から少ない方に分割する制度です。
簡単に言うのが難しいのですが、イメージ的にはこのようにもっておいてもらえば良いと思います。
注意が必要なのは対象になるのは婚姻期間中に掛け金を支払っていた年金だけだということと、すぐにお金が入ってきたり出ていったりするものではなく、ご自身が年金を受給できるようになったときに初めて実感できるものなのですが、老後の年金に関わってくる重要なものなので必ず離婚時に取り決めておかないといけません。
以下、難しい解説が続きますので読み飛ばしてもらってもいいです・・・
分からなければ、お近くの日本年金機構や年金事務所で聞いてみましょう。
二つの年金分割制度
年金分割には二つの制度があり、離婚した時期と婚姻中に国民年金ので第3号被保険者であったどうかでその取扱いが変わってきます。
合意分割制度
「合意分割制度」とは平成19年4月1日から実施された年金分割制度で、平成19年4月1日以後に成立した離婚等を対象としいます。
注)平成19年4月以後に離婚した又は婚姻が取消された場合に限り請求することができます。
注)事実上婚姻関係(内縁関係)解消でも認められる場合があります。
年金の掛け金を表す標準報酬総額(掛金の算定の基礎となった標準報酬の月額等をいいます。)というものがあり、夫婦それぞれの婚姻期間中の標準報酬総額を現在価値に換算し、その額の多い方から少ない方に対して標準報酬総額の一部を分割するものです。
離婚等をした夫婦の合意により按分割合(標準報酬額を分割する割合)を定めた場合に、夫婦の二人またはその一人からの請求によって、婚姻期間中の標準報酬等を夫婦で分割することができる制度です。
注)一人で請求する場合には年金分割の取決めを記載した公正証書が必要です。または裁判手続
按分割合については、夫婦での協議では合意に至らない場合は、一方からの家庭裁判所申立てにより、裁判手続きにより定めることができます。
分割が認められるのは、平成19年4月1日以後に成立した離婚等ですが、平成19年4月1日前から婚姻期間が継続していれば、その期間も分割の対象となります。
3号分割制度
「3号分割制度」とは、平成20年4月1日から実施された年金分割制度で、平成20年5月1日以後に成立した離婚等を対象としています。
厚生年金または共済年金の加入者の被扶養配偶者(国民年金第3号被保険者であった者に限 られます)からの請求によって、平成20年4月以後の期間中の標準報酬等をそれぞれ2分の1ずつ、当事者間で分割することがで きる制度です。
注)平成20年4月以後の国民年金第3号被保険者期間でなかった期間、合意分割の対象期間に該当します。
注)平成20年4月前の合意分割の対象期間にとなり3号分割の対象とはなりません。
分割の請求は、原則として離婚等をしたときから2年を経過するまでの間に請求しなければなりません。
両制度の覚えておきたいポイント
(1)両制度とも年金分割の請求は、原則として次に掲げる日の離婚が成立した日、または婚姻が取り消された日の翌日から起算して2年を経過した場合には行うことができません。
注)事実婚関係が解消したと認められる日も含まれる場合があります。
注)離婚から2年を経過するまでの間に、年金分割の按分割合に関する審判又は調停の申立てを行っている場合には、請求期限の2年を経過した後であって も、当該審判が確定した日又は調停が成立した日の翌日から起算して1月を経過する日までであれば、請求することができます。
(2)合意分割は夫婦である程度自由に按分割合を決定できるのに対し、3号分割はその割合が2分の1と定められています。
(3)合意分割は原則として夫婦が二人で手続きをしなければいけないのに対し、3号分割は被扶養者一人で手続きを完了することができます。
(4)合意分割は平成19年4月1日前の婚姻期間も対象になるが、3号分割は平成20年4月以後の被扶養者(国民年金の第3号被保険者)でであった期間のみが対象になる。
以上が年金分割制度の解説ですが、制度自体がかなりややこしいのである程度どのようなものかというイメージだけ掴んでおいてもらえれば大丈夫です。
専門家に依頼せずにご自身で実際の手続きをするときには、日本年金機構か年金事務所へ問い合わせるようになると思います。
離婚協議書への記載の仕方
年金分割の定めを離婚協議書に記載する場合は以下のような文章になります。
第6条(年金分割の定め)
甲(第一号改定者)と、乙(第二号改定者)とは、本日、日本年金機構理事長に対し対象期間にかかる被保険者期間の標準報酬の改定又は決定の請求をすること及び請求すべき按分割合を0.5とする旨合意した。
甲 (昭和00年00月00日生)
(基礎年金番号 0000-000000)
乙 (昭和00年00月00日生)
(基礎年金番号 0000-000000)
離婚協議書に記載するのは合意分割が対象となり、3号分割は対象となりません。
第一号改定者とは年金を分割される方のことで、第二号改定者とは年金を分割してもらう方になります。
基礎年金番号は、ご自身の年金手帳に記載されている番号を正確に記入しなければ処理ができないので注意が必要です。
按分割合は上記の例の場合は0.5となっていおり、分数で言うと2分の1です。
この按分割合はある程度自由に決めることができますが、第二号改定者が婚姻期間中に厚生年金又は共済年金に加入していた期間がある場合は、按分割合を定めることのできる割合に制限がでてくるので注意が必要です。
按分割合を定めるために必要な年金分割のための情報通知書
合意分割で定めることができる按分割合は「年金分割のための情報通知書」に記載されており、日本年金機構に発行してもらうものです。
年金分割の按分割合を定めるために必要な他、公正証書を作成する際にも必要になる書類となります。
この書類は請求してからお手元に届くまでに2~3週間ほどの期間を要するため、離婚の話し合いをする段階になった場合は早めに請求しておきましょう。
請求の仕方は日本年金機構のホームページのリンクを貼っておきますので参考にしてください。
離婚問題でお困りで専門家を探したいなら、全国800、延べ1000の事務所からあなたにピッタリの専門家をご案内してもらえます。もしかしたら僕にあたるかも知れません(*^▽^*)
↓↓↓